少し前、サービス付き高齢者住宅に入居してきた80代の女性。
姪っ子さんが、こっちにいるからと、今まで住んでいた土地から引っ越して来た。
80代になって、住み慣れた所を離れ、新しい土地に住むって、勇気がいるだろうと思う。
持病を持っている彼女は、殆どの時間を自分の部屋の一室で一人で過ごす。歩けないわけではないけれど・・。
部屋の外へ出るのは、同じ階の浴室へ行くぐらい。皆が集まる食堂へも行かず、自室で、一人ご飯を食べる。
時々話をするのは、訪ねてくる姪っ子さん以外は、訪問診療の医師と看護師、
入浴介助や生活援助で訪問するヘルパー、ケアマネージャーぐらいではないかと思う。
どんなことを考え、何を思い、毎日生活をしているのだろう・・と想像する。
先日、生活援助で訪問する機会があった。まずは、換気をするため窓を開ける。
するとベッドの布団の中からこんな声が・・・。
「気持ちいい風だね。大袈裟かもしれないけど、生きているって感じがする」と。
部屋に入ってきた風。まだ冷たい、ただの風。
それでも彼女にとっては、生きているって感じがするのだ。
その言葉に、ちょっとびっくりした。
「ホントに、大袈裟だけどね・・」と言いながら、照れたように微笑む。
それでも、生きているって感じることが出来るのは、幸せなことかもしれない。
バタバタと、忙しく過ごす毎日、当たり前の様に繰り返される毎日の中に
心から「生きている」って感じる瞬間は、あるのだろうか。
私の「生きている」って感じる瞬間は、いつなんだろう・・・。