episode4 来た甲斐があったなぁ・・・。

 小規模デイサービスで音楽レクリエーションを担当していた頃の話です。

 

 どちらかというと、積極的に音楽レクリエーションに参加されるのは、女性が多いように感じていました。

 偏見かもしれませんが・・・。

 男性でも音楽が好きな人は、当然いると思います。でも・・・。

 やはり、日々の生活に精一杯で、音楽を聴いている時間もなかったと言う人も確かにいたんだと思います。

 それは、男女問わずかもしれませんが。

 なので、興味がないのに、参加している人もいるのだろうなぁ

 もしかしたら、本当は嫌なんじゃないかなぁとそんなことを思いながらやっていました。

 

 80代のある男性。自宅で一人暮らしをしていた男性の利用者さん。

 「この前、危うく洗剤を口にするところだったみたいだよ」と他のスタッフから聞きました。

 認知症が進んできて、一人で暮らすことが難しくなってきていました。

 

 そんな状況だったから、デイサービスに行くことも、渋々という感じのときもありました。

 それでも、私の担当の音楽レクリエーションに拒否をすることもなく、参加してくれていました。

 でも反応があまりなく、デイサービスで過ごす時間や音楽レクをどう感じていたのかは、分かりませんでした。

 

 ある日、音楽レクリエーションで、トーンチャイムという楽器を使ってアンサンブルをしました。

 即席で出来る簡単なアンサンブル。それでも、アンサンブルは一人では出来ません。

 何人かで一緒に音を奏でたり、また順番に音をつなげていったりと、協力することが必要です。

 一人一人の音を合わて、みんなで一つのものを作ります。。

 

 みんなで一つのチームになる。

 

 音楽レクリエーションが終わった後、おやつを食べながら、

 「今日の音楽は、楽しかったなぁ・・・ここに来た甲斐があったなぁ・・」

 「家でひとりじゃ、こんなこと出来ないからなぁ・・」

 と、笑顔で独り言のようにつぶやいてくれました。

 

 その時は、「喜んでもらえて、良かったです!」と

 簡単な返事しか出来ませんでした。 

 

 でもその後、その言葉は、ずっと、私の心に残ることとなりました。

 

 音楽レクリエーションをしながら、これでいいのかな?と、迷ったり、悩んだりしたとき、その利用者さんの笑顔と言葉が、浮かんできました。

 そして、これでいいんだと何度も勇気をもらい、続ける意味があることなのだと、私を励ましてくれました。

 

 その利用者さんは、今はどうしているのでしょうか?

 もう、会えないけれど、本当に感謝しています。

 大切な言葉を、ありがとうございました。